マネーガイドJP〜保険・年金・医療費 from マネーガイドJP

国民年金の最も有利な受給開始年齢と寿命

国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満の人全てが加入する事を義務付けられた公的な保険制度です。年金にはいくつかの種類がありますが、一般的には65歳から亡くなるまで、毎月一定額が受給出来るようになっています。厚生年金などは現役時代の年収によって変わりますが、国民年金は(後述する受給開始年齢による変化を除けば)年収にかかわらず受け取り金額は一定です。

そして年金が貰える年齢は基本的に65歳からですが、実は前後5歳の繰り上げ・繰り下げが認められています。つまり60歳〜70歳までの任意のタイミングで受給開始時期を決められるのです。

ポイントは、国民年金は貰い始める時期によって、毎月の受給金額が変わる事です。受給金額は「貰い始めた年齢」だけで決まり、その後何歳まで生きても変動しない仕組みになっています。

2016年現在、初期設定(何も手続きしなければ勝手に支給が始まる)の65歳から貰い始めた場合、国民年金の年間受給金額は78万100円です。例えば、受給開始時期を最も早い60歳に繰り上げた場合、年間の受給金額は54万6070円に減ります。一方で、最も遅い70歳に繰り下げた場合、年間110万7742円に増額されます。この金額が、その後死ぬまで受け取り続けられる訳です。

当然ながら、短命なら繰り上げた方が得をしますし、逆に長生きすればするほど繰り下げた方が生涯の受け取り金額は多くなり有利です。ではその損益分岐点はどうなっているのか、以下の比較表でシミュレーションしました。

国民年金の損益分岐点と年齢比較表
受給開始年齢 最も有利な死亡年齢 1年間の年金支給額
60歳 72歳までに亡くなる 54万6070円
61歳 73・74歳 59万2876円
62歳 75・76歳 63万9682円
63歳 77・78歳 68万6488円
64歳 78歳8ヶ月〜79歳0ヶ月 73万3294円
65歳 無い! 78万0100円
66歳 79歳1ヶ月〜10ヶ月 84万5628円
67歳 80・81歳 91万1157円
68歳 82・83歳 97万6685円
69歳 84・85歳 104万2214円
70歳 86歳以上生きる 110万7742円

表の見方は、例えば72歳までに亡くなる場合は、年金支給開始年齢を60歳に繰り上げるのが一番総額が多いです。しかし、73・74歳まで生きた場合は、61歳から受給するのが一番得になっています。以後、長生きする程に繰り下げた方が得になり、86歳以上まで生きる場合は、70歳への繰り下げが最も有利になります。

2015年時点での日本人の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳です。ゆえに女性の場合は、最も遅い70歳から年金を貰い始めるのが、生涯で貰える年金額が最大になる可能性が高いと言えますね。

初期設定の65歳で支給開始は、最も損するので注意!

なお初期設定である「65歳」で受給開始する場合、最も年金支給金額が多くなる寿命はありません!長生きしても、短命で無くなっても、有利になるケースが全く無いのです(1年毎でなく、1ヶ月毎に比較しても皆無)。

これは年金受給で最も注意すべき点です。デフォルトで貰い始めると損をする仕組みの理由は、少しでも年金支払い金額を減らしたい政府の策略だと思われます。

したがって健康に自信があり平均よりも長生きすると思う人は66歳以降に繰り下げ、長生きはしないだろうなぁという人は64歳以前に繰り上げ支給がベストです。また自営業者で、60歳を越えても仕事は続けるので当面お金に困らないが、長生きした時の老後が不安だという人は、70歳まで繰り下げて年間の支給金額を最大化する事が、最善のリスクヘッジになります。いずれにせよ、初期設定の65歳で貰い始めると損だというのが、年金の受け取りで注意すべき点ですね。

国民年金の最も有利な受給開始年齢と寿命まとめ
・国民年金の受給開始時期は、60〜70歳までの間で任意に決められる
・損益分岐点は、72歳までに亡くなる場合は60歳に繰り上げるのが有利。逆に86歳以上生きるケースでは70歳まで繰り下げるのがベスト
・デフォルト(65歳)の受給開始は、有利な死亡年齢が全く無い!

ただし、この金額はあくまでも2016年時点での計算で、上記の金額が今後も維持されるかは分かりません。さすがに国民年金は社会保障制度のベースとなる「基礎年金」なので、制度が完全崩壊する可能性は低いと思われますが、受給金額が減額されるリスクは充分考えられます。

何より、自分の寿命〜何歳まで生きられるのか?などは誰にも読めません。繰り上げと繰り下げ、どちらが有利かという比較は、騎乗の空論に過ぎません。とはいえ、予め年金受給総額の目安を知っておく事は無駄にはならないでしょう。老後不安を減らす意味でも、若いうちから将来の年金について考えておくべきですよ。

 


  マネーガイドJP (C)2014.rh-guide . All rights reserved.