株式投資ガイドブック from マネーガイドJP

公募増資と第三者割当増資の違い

企業の増資には主に「公募増資」と「第三者割当増資」の2種類があります。
公募増資とは、株式市場を通じて幅広く資金調達する方法のことで、一般の投資家も新規発行株を買うことが可能です。一方で第三者割当増資とは、既存株主以外の特定の第三者のみから資金調達する方法のことで、一般の投資家は新規に発行する株を買う事は出来ません。

上場企業が増資する時は、どちらの場合も事前に公告する義務があります。というのも、増資をすれば発行済株式数が増える為、株主利益の希薄化をまねく為に、既存の株主にとっては(そのままでは)損をすることを意味するからです。この「一株利益の希薄化」は、公募増資であろうと第三者割当増資であろうと変わらず起きることになります。

しかし、資金調達によって設備投資や事業拡大により、企業の利益自体が増加すれば、希薄化した分以上に株主の利益が増えることも出来ます。そうなるのであれば、投資家にとって理想的な増資であり、歓迎すべきことだといえます。

またREIT(不動産投資信託)の場合、税制の問題などから利益は全て配当に回すことになり、内部留保は基本的にありません。その為、REIT会社が収益拡大の為に新たな物件を取得する為には、金融機関から借金をするか、若しくは増資するかのどちらかしかありません。しかしREITの場合、増資資金は新規物件の取得に使われ、物件が増えれば確実に売上は増えていきますから、基本的には前向きな増資だと言えるでしょう。

増資と株価の関係

ところが増資には、かなり後ろ向きなケースや、単に資金繰りに困っている為に行われることもしばしばあります。

例えば2008年の金融危機以降、UFJ・みずほ・三井住友の3大メガバンクや、野村証券・大和証券など、大手金融機関がこぞって増資しました。しかしこれらは決して将来の利益拡大に繋がるようなビジョンはなく、単にその時企業の財務基盤が弱まっていたことの補填だったり、将来の自己資本比率規制が強まるとの憶測からの「どさくさまみれの増資」でしかありませんでした。その為、既存株主達はこの増資案を嫌悪し、上記の金融機関は全て増資発表後に株価が大暴落を起こしています。

特に2度に渡り、数千億円規模の増資を行った野村証券(野村HD)には、証券会社として失格だと非難が相次ぎました。自ら野村HDの株価を空売りしてるんじゃないのか?などという噂話も出るくらいでした。

公募増資だろうと第三者割当増資だろうと、その瞬間には既存株主の価値は希薄化されますから、近年では株価は下がるケースが多いです。しかしその後、会社が資金調達によって更に大きく成長できると多くの投資家が判断すれば、増資発表後でも株価は上昇することもあります。また、収益増加に繋がらない後ろ向きの増資の場合でも、そのことが事前に予測されていて株価に織り込まれている(一定期間ずっと株価が下がり続けている)場合は、増資発表後に株価が下がらず、材料出尽くしで逆に反発するケースもまれにあります。

いずれにしても、増資発表を材料にした投機合戦は、情報力も資金量でも個人投資家は圧倒的に不利なので、参加しないのが賢明です。


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