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税務調査が入る確率

会社組織にせよ、個人事業主にせよ、税務調査に入られる事は百害あって一理なしですから、極力避けたいところです。では実際に、税務調査に入られる確率とはどの位なのでしょうか?

まず先に結論から。実は税務調査が入る確率は「実調率」という数値で国税庁が出しており(*注)、最新(2006年)の数値で法人が4.9%、個人事業主は0.8%となっています。意外と低いと思いませんか?特に個人事業主は、100年に1回以下の確率ですから、ほとんど恐れる必要など無いレベルです。

・関連;法人が個人事業主より不利な点

では何故、これだけ低い確率なのでしょうか?その理由をまず、単純な計算から推計してみます。2012年度時点で、国税庁職員の数(全国の税務署職員)は5万7472人となっています。一方、全国の事業所数(確定申告している法人及び個人)は、総務省の統計によると約600万カ所です。即ち、税務署職員一人当たりで割れば、100カ所超となります。

税務署職員は公務員ですから、祝祭日は基本的に休日です。それを除いても、職員全員が2日1件ずつの事業所を担当すれば、日本のすべての事業所に税務調査を行える事になります。しかし、これは現実離れした話であり、実際にこのような確率で税務調査を行うことは出来ません。

その理由として、まず税務署職員も会社組織と同じで、色んな部署がありますから、全ての職員が税務調査の現場に出向くことなど、到底不可能です。よって、上記の確率計算で、分母となる職員数は何割か減ることになります。

次に、時間的な制約の問題です。税務調査とは、脱税している事業所から税金を取り立てることですから、確定申告の書類以外にも、入念な下調べが必要です。勿論、帳簿の調査だけでなく、銀行口座を調べたり、取引先との反面調査も必要です。飲食店などは、店舗に出向いて「何度も客として通い詰めて、割り箸やおしぼりの数を調べる」なんて都市伝説もありますが、実際にある話だそうです。従って、大きな企業・お店に税務調査に入る際は、反面調査も含めると複数の職員が数日かかりっきりになる訳です。一日に一件ペースでの調査など、到底不可能なのです。

しかも、税務署の扱う税金は、所得税や法人税だけではありません。相続税や固定資産税など、種類は多岐に渡ります。特に相続税は、金額が大きい上に一回ポッキリの徴税ですから、税務署職員も入念に調べ、少しでも多く取り立てようと躍起になるといいます。つまり、実際に税務署職員が所得税・法人税の税務調査に割ける時間は、最初の計算よりも更に小さくなります。

税務署職員は徴税ノルマを課されている

そして税務署職員は、追徴課税のノルマも背負っています。このノルマは件数では無く金額ベースであり、より多額の追徴課税を取った職員ほど、評価が高くなって出世に影響するそうです。一般的に、売り上げ1000万円未満の事業所には税務調査は入らないと言われるのは、職員たちはそんな「小物」に構ってられないからなのです。従って、最初の計算で出た確率と比べて

・売上が大きい事業所ほど税務調査に入られる確率は高くなる
・売上1000万円未満の事業所は、税務調査に入られる可能性はほとんど無い

という結論が導き出されます。よって、売上の小さな個人や零細事業主など、税務調査を心配する必要など無いことが分かるでしょう。

更に言うと、冒頭に出した「実調率」のデータからは、近年は低下傾向〜つまり税務調査に入られる確率が年々下がってきていることが分かります。その理由として国税庁は、業務量の増加や業務の質的困難化を挙げています。世の中の複雑化、特にIT・インターネットの進化で、税務署職員がビジネスの概要を把握しきれなくなっていることが伺えます。

*注;国税庁の実調率が載った資料(PDFファイル。非常に重いので注意)。7枚目(5ページ目)に年度別実調率のデータグラフがあります。


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