特集〜サッカーワールドカップ from マネーガイドJP

ワールドカップのアジア枠が絶対に減ることはない理由

サッカーのワールドカップ・ブラジル大会が佳境を迎えている。残念なことに日本は予選リーグで一勝も出来ず、敗退が決まった。日本だけでなく、韓国・オーストラリア・イランとアジア勢は全て予選リーグで敗退した・・・しかもどのチームも一勝も出来ずに。前回2010年の南アフリカW杯では、日本や韓国が予選リーグを勝ち上がった事と比べると、理由はともかく結果はアジア勢の大惨敗に終わった。

これを受けて、気の早いメディアは「ワールドカップのアジア枠が減らされるのでは?」という煽り記事を載せ始めている。ブラジル大会までのアジア地域の出場枠は4.5だったが、これが次回ロシア大会で3とか3.5になるというデマを流し始めている。

確かにアジア勢が世界に比べて劣勢だったのは事実だが、しかしワールドカップのアジア出場枠が減らされる可能性は、ほぼゼロだ。その理由は、運営するFIFA(国際サッカー連盟)にとって、ワールドカップは「ハイレベルな大会にすること」が目的ではないからだ。FIFAにとってワールドカップの意味は、第一に「金儲けの場」であり、第二に「将来の金儲けにつなげる場」なのである。

FIFAはとにかく高いテレビ放映権料で儲けたいのである。よって、いくらでも金を積んで買ってくれる日本などは、最大のカモなのである。14年ブラジル大会は合計2000億円の放映権料とされているが、日本はそのうち400億円を払ったと言われている。もしアジア枠を減らせば、日本がワールドカップに出られなくなる可能性がある。もし日本がワールドカップに出ないのであれば、日本(電通)が高い金を投じて放映権を購入することはないので、FIFAにとっては全体の2割もの放映権料を支払ってくれる最大のカモを失うことになる。日本の代わりに出場する国で、日本並に放映権料を支払う経済大国など存在しない。

そしてもう一つ、FIFAにとって重要なのが中国の存在だ。今回のワールドカップに中国は出場していないが(予選敗退)この国こそが、FIFAが「将来最も重要となるマーケット」と考えている。その理由は、中国には日本の10倍=13億人の人口を要する世界最大の市場で、名目GDPは日本を抜いて世界第二位に躍り出ている。今後、中間層の所得が増々増えていくことは確実で、サッカーの観戦者も間違いなく激増していく。放映権を高く売りたいFIFAにとって、中国は最大のフロンティアになるのだ。

そして中国は、バレーボールや卓球や体操競技の例をを見れば分かるように、国家が強化に力を入れるスポーツ競技は、必ず世界トップレベルになっている。何せ13億人もの「分母」があるのだから、優秀な選手が発掘される可能性は高く、政府が強化に金をかけ始めれば、ワールドカップ出場レベルにはすぐに達するはずだ。そうなれば、中国国民の注目も集まり、高い放映権料を支払ってもペイできるようになるはずだ。

FIFAは中国で儲けたいから、アジア枠はむしろ拡大したい

当然、中国がワールドカップに出場してくれることが、FIFAにとってベストシナリオとなるので、アジア枠を減らすなんて、ありえない事なのである。むしろアジアの出場枠を広げ、日本と中国にワールドカップ出場してもらい、高い放映権料で儲けたい・・・これが銭ゲバと悪名高いブラッター会長以下、FIFA幹部の望みである。

アフリカも現状では高い収益を生む土地ではないが、将来を見越して枠を優遇せざるを得ない。治安に不安の大きい南アフリカでワールドカップを開催した理由は、将来の巨大マーケットを開拓する目的だったからだ。

このようにFIFAの経済的動機から考えれば、もし枠を削るのであれば、それは北中米カリブ枠である。ブラジル大会ではコスタリカが、イタリア等と同じ「死の予選グループ」を突破しベスト8入りを果たす快挙を成し遂げたが、コスタリカは所詮人口500万人程度の貧乏国家である。いくら躍進しようが、FIFAの金ずるにはならないのだ。そもそもカリブ海諸国はサッカーよりも野球が盛んな国が多い。北中米カリブ枠は、人口が多く十分な放映権料が取れるアメリカ・メキシコの2大国が出てくれれば、後はどうでもいい存在なのだから、現状の3.5枠も与えるのは無駄だといえる。ワールドカップでの結果は関係なく、北中米カリブを2.5枠に減らして、その分アジア枠を一つ増やす方が、FIFAが金儲けを優先するなら合理的な判断になる。

しかし、さすがに成績に反して枠を減らすというのは、反発も大きいだろうから実現は難しい。FIFAが経済合理性と政治的判断を合わせて落とし所を考えると、次回ロシア大会の大陸別出場枠は、現状維持(アジア4.5、北中米カリブ3.5、アフリカ5)で落ち着く可能性が極めて高い。少なくとも、上記のように放映権料の理由から、アジアの出場枠が減らされる可能性は全く無いといえるだろう。


  マネーガイドJP (C)2009.rh-guide . All rights reserved.