インフレ(起きる確率=100%)
財政破綻(デフォルト)で確実に起きることとして、インフレ〜即ち物価が上昇することが挙げられます。これは他に挙げた9つの事象と違い、100%間違いなく起こります。財政破綻は、その国の国債ならびに通貨が信用を失うことですから、通貨の価値が下がる=モノの価値が上がることは、絶対に避けられないのです。
日本人〜特に若い人は「生まれてからずっとデフレ」なので、インフレに対する認識は薄いでしょう。40代以上の人なら、1970年代のオイルショックを経験しているので、インフレの恐ろしさを体感していることでしょう。しかし、これから日本を襲うであろうインフレは、オイルショック時のそれとは、根本的に大きく異なります。
まず、インフレの規模が違います。「国家は破綻する(日経PB社)」によると、デフォルトを起こした国では、平均で170%という高い物価上昇が起きています。オイルショック時の日本のインフレ率は、最大でも20%程度でしたから、社会に与える悪影響は桁違いとなります。
インフレの原因が本質的に違う事もあります。物価の上昇には、大きく分けて二つのパターンがあります。一つ目は、モノの価値が上がるために起きるインフレで、オイルショックの時もこれに該当します。原油価格が上昇したことで、石油製品全般が値上がりしたことが原因でした。一方で、もう一つのパターンとして、通貨の価値が下がることによるインフレもあります。財政破綻で起きるインフレが、これに該当します。
戦後間もない頃の日本では、この「お金の価値が下がる」ことによるインフレが起きていました。しかしその後、日本が高度経済成長に入り、バブル経済を経て、現在のデフレ経済に突入するまでの約60年間、通貨の価値が下がることによるインフレは、一度も起きていません。オイルショックを始め、この間の全ての物価上昇が、モノの価値が上がるインフレでした。
経済学では、モノの価値が上がる方を「悪いインフレ」、お金の価値が下がるインフレを「良いインフレ」と呼んだりもします。ところが、財政破綻を伴う「お金の価値が下がるインフレ」は、決して良いインフレとは言えません。財政破綻は、お金の価値が「下がる」を通り越して、お金を「誰も信用しなくなる」という酷い状態に陥るからです。
直感的に分かると思いますが、国民がお金を信用しなくなれば、その国の経済は大混乱に陥ります。最も極端な例が近年のジンバブエで、国民はジンバブエドルを使わず、米ドルや物々交換で日々の生活しています。また、80年代後半のブラジルや1998年のロシアでも、経済活動の現場では(全てでは無いものの)自国通貨ではなく「米ドル」が使われていたそうです。
ロシアやブラジルは、その後の高い経済成長で、ルーブルやレアルの信用力が回復しました。それは彼らが「新興国」であり、経済成長の余地が大きかった事が大きな要因です。一方で日本は、経済が成熟した国です。そんな日本が財政破綻して、その後に極度の円安が起きたとしても、ロシアやブラジルほどの急回復は見込めないかも知れません。
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