日本で財政破綻が起きる確率は?
日本政府の借金(国債残高)は、2012年現在で対GDP比200%を超え、ダントツで世界最悪です。デフォルト(国債の債務不履行)が懸念され、ユーロ危機の原因となったギリシャ(*注)でも、対GDP比で160%程度に過ぎません。日本政府の財政状態は、世界でも類を見ない惨状なのです。
では、日本が実際に財政破綻する確率は、一体どの位なのでしょうか?この問いに答えるには、まず「財政破綻」の定義が何なのかを定めなければ、答えようがありません。
もし財政破綻の定義を「国債の償還が拒否される」事だとするならば、日本で起こる確率は皆無=0パーセントです。
その理由は、日本国債は100%が日本円建てで発行されている為、日銀に新たにお金を刷らせて債権者に返済する事が出来るからです。1998年のロシアや2001年のアルゼンチンなどが財政破綻に陥ったのは、国債が米ドルなどの外貨建てでも発行されていた為、お金を刷って返済する事が出来なかったからです。
しかし、たとえ100%が日本円建てであっても、突然かつ大量に「国債の日銀引受」を行えば、国債の価格が暴落(長期金利が急騰)します。長期金利が危険水域(現在のイタリアやスペインと同程度)の7%まで上昇すれば、国債を大量に抱えるゆうちょ銀行やメガバンクが莫大な損失を出し、経営破綻寸前に追い込まれるでしょう。こうなれば、国内経済はパニックに陥りますから、デフォルトが起きたも同然の状態になります。
もし財政破綻の定義を「長期金利が7%にまで上昇する」とすれば、改革を行わなければ100パーセントの確率で起こります。
この破綻を起こさない為の改革は、突然かつ大量ではない日銀引受、つまり毎年少しずつ日銀の買いオペ枠を増やしていく事です。適切な範囲(年3%前後)でインフレを起こし、名目GDP成長率を高めていけば、借金の対GDP比が下がっていきます。このような計画的に借金負担を減らす事を「インフレターゲット」といいます。
適切なインフレで名目GDP成長率を高めれば、デフォルトは起きない
近年の日本は、デフレで名目GDP成長がほぼゼロであるから、財政破綻の懸念が高まっているのです。実は日本の政府債務残高の伸び率は、アメリカや欧州先進国とほとんど同じです(むしろ低い)。しかし、アメリカや欧州各国は名目GDP成長率が大幅にプラスなのに対して、日本だけデフレの影響でマイナスです。このことが、日本の債務残高対GDP比が世界最悪に陥っている原因です。
現在の日本では、消費税増税を行いたい財務省が、意図的にデフレを起こしているという、とんでもない暴挙が行われているのです。財務省は「消費税増税で財政再建する」と言いますが、増税で財政再建することは100%不可能です。増税で財政再建を遂げた国など、古今東西何処にもありません。財政を健全化するには、絶対に「名目GDP成長率を高める」という政策が不可欠なのです。
財務省を解体し、デフレ脱却に向けて適切な金融緩和を起こすインフレターゲットを行えば、長期金利が急騰する事はありません。よって「長期金利が7%まで上昇する」という破綻定義の場合、今後の政治の行方次第で、破綻確率は100パーセントにもゼロにもなります。
霞ヶ関官僚の弱体化を目指す勢力、例えば橋下徹(日本維新の会)や、小沢一郎(国民の生活が第一)や渡辺喜美(みんなの党の)らのオリーブの木構想が政権与党になれば、財政破綻は避けられるでしょう。しかし、自民党や民主党が政権与党に居座り続ける(=財務官僚が政治を牛耳る)なら、近い将来、日本は間違いなくデフォルトに陥ります。
*注:ギリシャは当稿執筆時(2012年9月中旬)、まだデフォルトしては居ません。しかし、同国の経済状況や、ECB(ドイツ)の姿勢を考えれば、近い将来デフォルトに陥る可能性は極めて高いと思われます。 |