日本は財政再建を行う必要性は無い!
日本では、財政破綻を回避する為に、財政再建を行うべきだという主張が蔓延しています。財政再建論者の主張の根拠は、日本政府の借金(国債発行残高)の対GDP比が世界最悪であることを元にしています。確かに、日本の国債発行残高はおよそ1000兆円、GDP(約500兆円)の二倍もあり、これはギリシャをも上回っています。だから財政再建論者は、借金を減らし、返済を増やすべきだと訴えています。
一見すると筋が通って見えますが、実はこの理論は間違っています。結論から言うと、今の日本には財政再建を行う必要性は全くありません。むしろ、借金の返済など行わず、積極財政で政府がバラマキを行うべきなのです。
暴論のように思うかもしれませんが、これは紛れもない事実です。なぜなら、世界中のあらゆる国家が、国債の償還(借金の返済)を未来に繰り延べているのです。これは、国債の償還費用を「新しく国債を発行して賄う」という方法で、一般企業がこれを行うと破綻濃厚でしょう(いわゆる自転車操業)。しかし、国家は永遠に続いていくものであり、年金や医療費などの「世代間扶助」と同じですから、将来世代に先送りし続けても何ら問題はありません。
実際にアメリカもヨーロッパ各国も、そして中国やブラジルなどの新興国も、皆この方法で財政を賄っています。国債償還の繰り延べは国家財政の常套手段であり、経済の常識なのです。ですから、現在日本政府が行っている「国債を借り換え続ける」ことは、何ら間違っていないのです。
しかも、日本政府の借金増加ペースは、他国と比べても多い訳ではありません。左の図のように、日本の国債残高の伸び率は、他の先進国と同程度(むしろ少ない位)です。しかし、右図のように名目GDPが増えていないので、GDPに対する債務残高比率が急増しているのです。国債を借り換え続けることが問題ではなく、名目GDPが増えない(借金の負担が年々増え続ける)ことが、日本財政の本当の問題点なのです。
名目GDPが増えていない原因は、日本がデフレだからです。日本は、物価変動を除く「実質GDP成長率」はプラスですが、デフレで物価が下落しているので、GDPの総額が増えていないのです。アメリカやヨーロッパ各国は、経済がインフレ状態なので、GDPの総額が年々増えており、相対的に政府債務の負担が軽減され続けているから、財政破綻の懸念が無いのです。
つまり、日本もアメリカなどのように、経済を適度なインフレ状態にしていけば、国債残高対GDP比の高騰を抑制でき、財政破綻する心配は無くなるのです。逆に、今のようなデフレ状態が今後も続けば、やがては国債の負担に耐えきれなくなり、長期金利の高騰が起きて、経済が破綻することになります。財政健全化には、経済のインフレが不可欠なのです。
歳出削減は景気を悪化させる
今度は逆に、借金を繰り延べず、財政再建に走った場合にはどうなるのかを見てみましょう。財政再建というのは、即ち政府が支出を削減すること、もしくは増税することですが、これは経済にとっては明確にマイナスになる行為です。増税が景気に悪影響を与えることについては、述べるまでもないでしょう(※1)。しかし、歳出削減まで景気にマイナスであることは、意外に国民には理解されていません。
歳出削減とは、公務員の給与をカットすることや、公共事業などの政府支出を抑制する事です。しかし、公務員も私生活では一人の消費者です。公務員の給与を削減すれば、彼らの消費を抑制する事に繋がり、景気に悪影響を与えます(※2)。
また、公共事業というのは「政府が強制的に経済需要(国民の仕事)を作り出すこと」です。不景気時には、民間企業が事業に消極的になり、国家全体で需要不足に陥ります。そこで政府が、無理矢理にでも需要を作り出し、景気を底支えする必要があるのです。公共事業を抑制してしまえば、誰も景気悪化を歯止め出来なくなります(※3)。
このように財政再建は、歳出削減にせよ、増税にせよ、いずれも景気を悪化させる愚策なのです。政府債務の増大には、財政再建ではなく、国債の借り換えとインフレで対処することが、正しい財政健全化策なのです。
※1 一部に「増税で景気は良くなる」とほざくバカ学者も居るが、こいつらは魂まで財務省に売り渡す生粋の御用学者に過ぎません。
※2 「公務員の給与が高すぎる」というのは正しいですが、それを是正する方法として、公務員の給与を削減するのは間違いです。景気を浮揚させて、民間の給与が公務員を上回るように仕向けるのが、正しい経済政策です。
※3 無論、今までのように無駄な道路を造るのではなく、脱原発の新エネルギー政策や、医療や介護産業への補助など、公共事業を「本当に必要な支出」へと振り向ける事は必要です。 |