ネタの金庫
from マネーガイドJP
自民党の森喜朗元総理大臣は、政治の世界だけでなく、東京オリンピック組織委員会会長、日本ラグビーフットボール協会名誉会長など、スポーツなど他の分野でも権力者として君臨しています。
一方でご存知のように森喜朗は、数々の暴言・珍言を繰り返している失言王としても有名です。ITを「イット」と読んだり、クリントン大統領との会談時に「How are you?」を「Who are you?」と言ったとか(※1)、2014年のソチ五輪で転倒した浅田真央選手に対して「あの子は大事なときに必ず転ぶ」と発言するなど、無教養なのか天然ボケなのか分からない珍言をくり返しています。新国立競技場の建設費が高騰しすぎた問題でも「国がたった2500億円も出せなかったのかね」と発言し、東京オリンピック組織委員会会長として関わった事を棚に上げて他人事のような暴言を吐いています。
森喜朗は既に総理大臣でも何でもないですし、そもそも総理大臣時代も、数々の失言・暴言がたたり、支持率が一桁台という記録的不人気だった男です。この老害が、いくら暴言・失言をくり返しても権力を持ち続けられる理由は何なのでしょうか?
森喜朗は総理退任後、小泉純一郎の後見人的立場になり、フィクサーとしての立場を築き始めます。また自身も会長を務めた所属派閥=清和会は小泉人気を追い風に、自民党で最大の派閥となりました。そして小泉総理は、目の上のタンコブ・邪魔な存在であった自民党の他派閥の重鎮達に、比例代表での定年制を設けたり、また郵政民営化の造反を理由に党から追い出したりしたことで、などで清和会の立場はより強固になりました。
そして小泉が国会議員を辞めたことで、森喜朗は自動的に自民党内で最大の権力者に躍り出たのです。まるで「座りしままに天下餅を喰らう」徳川家康のような成り上がりですね。
そして小泉人気に乗っかって政治家になれた若手議員(いわゆる「小泉チルドレン」)は、選挙戦略から政治家としての金遣いに至るまで、政治のイロハを全て森喜朗(の側近達)の指導の元で行っていきます。そのため森喜朗は、小泉チルドレン達の政治家としての弱点・アキレス腱(政治資金の使途など)も一通り掌握していると思われます。
政治家は誰しも、選挙のやり方や政治資金の使途などで、突っ込まれると困る事を一つや二つは抱えています。従って、自分達の泣き所を把握されている森喜朗に対して、若手政治家達は絶対に刃向かうことが出来ない力関係にあるのです。
同様にスポーツの世界でも、例えばオリンピックの強化費を優遇してもらう等で、森喜朗に世話になっている業界は沢山ある訳です。彼らもまた、森喜朗にへそを曲げられると困るので、媚び諂い、失言が出ることを承知で権力に付かせてご機嫌取りに終始するのです。
森喜朗があんなに馬鹿そうなのに政財界のフィクサーでいられる理由は、面倒を見た政治家やすり寄ってきた業界団体の「弱み」を知り尽くしており、恩を売ることで誰も刃向かえない権力を確立したからです。丁度、小沢一郎やナベツネ(渡邉恒雄)が権力を築き上げたのと似た手法です。今の森喜朗は、他の自民党重鎮達を葬り去り、小泉チルドレン達の裏事情をすべて掌握しているので、下の世代は頭が上がらない存在になっているのです。
メディアを通じた失言部分だけ聞いていると、森喜朗は単なる馬鹿・ボケ老人にしか思えませんが、様々な分野で口利きを行い、権力基盤を築いていった、実にしたたか・ずる賢い人物なのです。今や、彼の地位を脅かす者は居ませんから、よほど巨大な不祥事が発覚でもしない限り、森喜朗は権力の座に居座り続けることでしょう。
東京オリンピックが行われる2020年までは、我々は森喜朗の小憎たらしい暴言を聞き続けることになりそうです。
※1.後に毎日新聞の高畑昭男が、捏造記事であると懺悔している。だが事実として広まった事は、如何に森が日頃から珍言をくり返していたかが伺えるエピソードです。